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−5年後
不思議な3兄弟が、ビースキー宅にて。

「チェー兄、一緒に遊ぼー??」
アルフィスが勉強をするチェーターに話し掛ける。
「アルごめんね、僕宿題やらなきゃ。宿題終わってからでいいかな?」
「うん!わかったぁ!」
今ではこんな会話が当たり前だ。

あれから5年。長いような短いような、そんな月日がたった。
チェーターはもう10歳。
近くの小さな塾へ通い、クラスでも村でも1番の成績を誇っている。
彼は近所の子供達と毎日暗くなるまで遊んでいる。

双子は5歳。
アルフィスは、いつのまにやら武器を覚えていた。
ある日、イーリスは木についている傷を見つけた。 どうやら刃物だ。母には心当たりがあった。

「アルフィス」
レイミーとじゃれあっていた彼女はたかたか歩いてきた。
「なぁに?」
そう言って不思議そうな顔をしている彼女に、母は言った。
「この傷はあなたがつけたのね?」
「そうだよ!」
まさか、こんなにカラッとした笑顔で答えれられるとは思わなかった。
「どうしてこんなことするの!」
「え!?」アルは怒られると思っていなかったようで、すぐ泣きそうな顔になった。
「ごめんなさい…。でも…みんなを守らなきゃいけないんだもん。その練習をしてただけだもん…」
イーリスはびっくりした。私たちを守る…?何を言っているのだ…?
「どういうこと?みんなを守るって?」
「私も分かんないの。」
アルフィスが言うには、チェーターに似ている背の高い青年が夜枕元に来たそうだ。
するといきなり「アルが強くなってみんなを守れ」と言った、という。

彼女の言葉には妙な説得力があった。
「だからね、私みんなを守るの!お母さんも私が守るの!」
アルフィスは「にっ」と笑って答えた。
娘が誰に、何に言われたかはよく分からないが、母はアルフィスなら本当に守ってくれる気がした。私達をナニカから。

「アルフィスは強いのね。」
「うん!」
そういうと、腰に巻いたベルトから1本のナイフを取り出し、静かに構え、目を閉じる。
そして次の瞬間には、カッという音と共に木の皮が落ちた。
また新しく傷がついた。
明らかに5歳の技ではない。
木を見ると、だいぶ深くまでナイフが刺さっている。
「チェー兄が教えてくれたの!」
「チェーターが…?」
「うん!私が皆を守らなきゃって言ったら、教えてくれたのっ」
チェーターは…またお父さんに教えてもらったのだろうか。

父は子供達と仲が良かった。チェーターには雑学から闘い方まで色々、レイミーには“すうがく”を教えていたのだ。

「お母さん?」
「あ、あぁごめんね。じゃぁアル、もっと強くなってお母さん達をしっかり守ってね?」
「うんっ!」
「でも木以外にはナイフを刺しちゃダメよ?」
「はーい」

そうしてレイミーの元に戻っていったアルフィスの背中は、まだ小さい。
なのにナニカを背負っている気がした。
だからか、イーリスは娘の背中に責任感を感じるのだ。

イーリスは腰まである髪を、風に靡かせながら冷静に考えた。
ただ気になることは1つ。アルフィスの言う、チェーターに似ているという青年。
ビースキー家がある村はとても小さな村だ。
もちろん村中の人々とは全員知り合いなくらい。
さらに、その村は名所があるわけでもなく、旅人などは10年に1度来るか来ないか。
そのような村に、見たことのない青年。信じ難いことだった。


−チェーターは塾の窓から雨雲を見つめた。






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