Lien⇔Line
−月のない、ある深夜。
両親が小さなリビングにて。
いつもなら2人も寝ている時間だが、この日ばかりは気にしていなかった。
2人は既に一刻ほど座っているが口を開かなかった。
しかし、ここで話を切り出すのは、母のイーリスだった。
「絶対におかしいわ」
「何がだよ?」
分かっていても彼は聞く。
そうでもしないともたない。
「アルフィスの身体能力、レイミーの学力…あんなの5歳児じゃありえない」
「…たしかにおかしいが……」
何が原因でこんな時間まで座っているかを、お互い言わなくても理解していた。
ある新月の夜、子供達が寝たあとのリビングの空気はひどく重かった。
昼間は子供達が走り回り、うるさい程の部屋が、
蝋燭だけの明かりに包まれて静けさを取り戻し、まるで別の場所ようである。
少しの風が壊れかけた窓の小さな隙間を通っている。
炎を燈す蝋燭は、黙っていてもかすかに揺れる。
イーリスは怖かった。
何かが、この家で起こるかもしれないという不確かな予測は何度も彼女の頭を過ぎる。
いつもは冷静に振る舞って笑顔を見せる彼女の顔は、まるで別人のように不安に満ちている。
イーリスの夫、ジャスビアもまた同じことを考えていた。
ジャスビアは楽天的で一家の元気の源といったような男だったが、この時ばかりは頭を抱えていた。
冷静で知的な雰囲気を放っているはずのイーリスが、ひどく焦っている。
…それに彼だって分かっているのだ。
双子の能力が普通をはるかに越えていることを。
頭の整理がつかずに、両者はまた口を開けずにいた。
リビングではただ、蝋燭が短くなっていくだけだった。
その異変は続いていることも知らずに・・