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プロローグ2
「ヴィス、ちょっといいかな。」
ヴィストラル、長いから略してヴィス。全く単純な呼び名だが、彼女が俺に出会った時につけてくれた。
その俺がいつもの少し寒いテントの中で寝る支度をしていた時に、聞きなれた彼女の声が外から聞こえたのだ。
「・・おう。」
その時、俺は少し緊張していた。
それは、寒がりな彼女がこんな時間まで起きていることが不思議だったし、何より声が震えていたから。
これは勘だが寒さだけの震えじゃないとも感じた。そう少し考えたが、俺はテントを出た。
「ちょっとついてきて。」
テントから出ると彼女の声が聞こえ、森の中へ歩いていってしまった。
「様子がおかしいな。」そう思ったが遅れをとらないように、少し早歩きでついていった。
そしてついた所は、何もない広場のような場所だった。
俺は辺りをぐるっと見渡したあと、彼女を、アルを見た。
「どうした?アル。」
アルフィス、長いから略してアル。彼女は俺に初めて会った時、そう呼んでくれと言った。
「えっと…ね、ヴィス。この間私の過去について聞いたじゃない?
…その、そろそろ言おうかなって思って。」
そう言ったアルの顔は、前に尋ねたときとは違い、固い決意も不安も感じられた。
俺は、どうしていいか分からなかった。だから、なんとなく空を見上げてみた。
星がいくつも瞬いていた。この沈黙とは対照的に。
なんだかゆっくり星を見たのは久しぶりな気がした。同時にアルと出会ったときのことが鮮明に蘇った。
「そうだ、あの時も…」彼女が、自分の旅の目的を告げた時も、同じ空が広がっていたように思う。そう、あの時も俺が黙って…
俺が黙って…沈黙を解いたのは
「これから言うことはヴィスには信じられないことかもしれないの。」
アルだった。
「でもヴィスなら信じてくれる。…と思ってる。だから、ちょっと長くなるけど聞いてね。」
彼女は俺と同じように、あの時と同じように、輝く空を見上げながら確認するようにゆっくり言った。
すぐ俺はうなずいたが、次の彼女の言葉は混乱をもたらす。
「私が生まれたのはもう59年も前のこと…」